木枯らしはいつのこと?東京と大阪で違うの?木枯らし一号の条件は?
「木枯らし一号が吹きました」とニュースで耳にすると、秋から冬への季節の移り変わりを感じる方は多いのではないでしょうか。
その一方で、全国ニュースで東京や近畿地方にこの木枯らし一号が吹いたと耳にしても、地元のニュースでは聞いたことがないという方もいますよね。
木枯らし一号は東京や近畿地方でしか吹かないものなのでしょうか。
そこで今回は、木枯らし一号について調べてみました。
そもそも木枯らしとは一体なんなのか、その意味や由来をご紹介します。
木枯らしの意味や由来や読み方
木枯らしとは、西高東低の気圧配置の時に吹く、毎秒8メートル以上の北よりの風のことを言います。
そして、気象庁(もしくは大阪管区気象台)が木枯らしをその年に初めて観測すると、「木枯らし一号」としてニュースで伝えられます。
木枯らしという言葉からもわかる通り、木の葉を落としてしまうような強い風、木を枯らしてしまうような冷たい風という意味があります。
また、天気図が読める方は、西高東低の気圧配置は冬によく見られるため、天気図とともに「木枯らし一号が吹きました」とニュースで聞くと、季節が秋から冬へと移り行くことを感じるようです。
なお、木枯らし一号に似たニュアンスの言葉に「春一番」というものがあります。
春一番は、二十四節気の立春から春分にかけて吹く、毎秒8メートル以上の南寄りの風です。
木枯らし一号が冬の到来を告げるのに対し、春一番は春の訪れを感じさせるものとなっています。
木枯らしはいつの季語?
木枯らしは冬の訪れを告げる北よりの強い風のことを言い、季語は初冬(冬)になります。
季語を用いるものには俳句がありますが、木枯らしは多くの俳人に詠まれており、季節の変わり目にたくさんの俳人が感性を揺さぶられたことの証と言えるでしょう。
ここでは、木枯らしを季語にしている俳句をいくつかご紹介します。
(※木枯らしは「凩」とも表記します)
・木枯らしや 竹に隠れて しづまりぬ(松尾芭蕉)
意味:竹の葉をざわつかせていた木枯らしが、竹林に吸い込まれて姿を隠したかのように急に静かになった。
・凩に しつかりふさぐ 蠣の蓋(正岡子規)
意味:木枯らしで冬の到来を知った蠣(牡蠣)が、蓋をしっかりと閉じて寒さを凌ぐ様を人に例えて表したもの。
・木枯らしや 目刺しにのこる海の色(芥川龍之介)
意味:木枯らしが吹く冬の日に、目刺し(めざし)の表面の薄い青色に、海の深い青色を想像したと感じさせる句。ちなみに目刺しは春の季語のため、俳句的には季語被りとなっています。
木枯らしはいつのこと?
木枯らし(一号)は、東京と近畿地方によって基準が異なります。
なぜなら、東京は気象庁に基基づいて発表されているのに対し、近畿地方は大阪管区気象台に基づいて発表されているからです。
それぞれの基準は次のようになっています。
東京
10月半ばの晩秋から11月末の初冬に、初めて吹く毎秒8メートル以上の北寄りの風を木枯らし一号としています。
東京地方には小笠原諸島、伊豆諸島は含みません。
近畿
二十四節気の霜降(10月23日頃)から冬至(12月22日頃)に、初めて吹く毎秒8メートル以上の北寄りの風を木枯らし一号としています。
近畿地方は京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、滋賀県の二府四県になります。
この中で、大阪、神戸、京都、舞鶴、彦根、和歌山、奈良の3地点以上で条件を満たす風が観測された場合に、木枯らし一号が吹いたと発表されるようです。
なお、統計的には木枯らし一号は「立冬」の時期に吹くことが多いようです。
立冬は二十四節気の一つで、「冬が立つ=冬の入り口」という意味があります。
立冬は現在の暦で言うと11月7日頃です。
昔の人は、この時期に北から冷たい風が吹くと、「冬の使者がやってきた」として冬ごもりの準備などを行っていたのではないかと思います。
木枯らしの発表が東京と大阪だけの理由
北海道や東北、北陸、四国、九州などの地方にお住まいの方は、全国ニュースで「東京に木枯らし一号が吹きました」などを見聞きすることはあっても、地元に木枯らし一号が吹いたというニュースを聞いたことはないのではないでしょうか。
これは、木枯らし一号の発表を東京と近畿地方でしか行っていないためです。
木枯らし一号の発表が東京と近畿地方のみなのは、次のような理由からです。
・人口が多く、人々の話題に上りやすい
・昔から続く慣習となっていることや、発表してほしいという要望が多い
つまり、その他の地域では木枯らしの条件に合った風が吹きにくいことや、吹いたとしてもあまり話題にならない、発表して欲しいという要望が少ないことから、発表に至っていないようです。
木枯らしが、東京と近畿地方でしか吹かないというわけではありません。
また、木枯らし一号は暴風警報などとは違い、吹いた後に発表されるため、特に注意を促すものではないそうです。
しかし、場合によっては風の強さによる弊害が起こる可能性があることから、そのような時は木枯らし一号の発表とは別に、暴風の注意報や警報が発表されるそうです。
なお、木枯らし一号の発表は、1968年に日本気象協会が発行する雑誌に掲載されるようになったのはわかっているのですが、いつから気象庁が発表するようになったのかはわかっていません。
木枯し一号の条件
木枯らし一号は、東京と近畿地方の場合では期間に多少の違いがあり、東京では10月中旬から11月末にかけて、近畿地方では二十四節気の霜降(10月23日頃)から冬至(12月22日頃)に初めて吹く毎秒8メートル以上の北寄りの風となっています。
木枯らし一号があるなら、二号、三号もあるのでは?と考えてしまいますよね。
気象庁によると、冬型の気圧配置となり強い風が吹けば観測の対象となるので、二号、三号が吹いたことはわかるそうです。
しかし、木枯らし一号のようにニュースで発表されないことや、人々の関心があるわけではないので、それぞれを木枯らし二号、木枯らし三号と呼ぶことはないそうです。
また、木枯らし一号は必ず毎年吹くわけではありません。
条件に見合わなければ木枯らしとならないため、東京では1977年と1979年、2018年は発生せず、近畿地方も1992年は木枯らし一号の発表がありませんでした。
木枯らしを英語でいうと?
木枯らしという言葉自体が英語圏にはないようですが、木枯らしという言葉を表現する英語の方法には「cold wintry wind」もしくは「cold wind」があります。
「wintry wind」を訳すと冬特有の風、「cold wind」は冷たい風なので、木枯らしの意味から考えると「wintry wind」の方が合っているのではないかと思います。
なお、木枯らし一号を英語にする場合は、「first wintry wind of the year(その年最初の冬特有の風)」という表現が妥当になるのではないかと思います。
アメリカやオーストラリア、イギリスなど英語圏の気象庁関連のホームページなどを検索してみても、木枯らしに該当するような表現は記されていません。
そのため、「秋から冬に変わる時期に冷たい風が吹いたら、いよいよ冬がやってくる」と言った季節の受け取り方は日本ならではのものと言えるかも知れませんね。
まとめ
木枯らしとは西高東低の気圧配置の時に吹く、毎秒8メートル以上の北よりの風のことを言います。
東京と近畿地方で観測が行われており、東京ではこの他に10月中旬から11月末、近畿地方では霜降(二十四節気の一つで10月23日頃)から冬至(12月22日頃)という期間の条件が加わります。
期間内に条件を満たした最初の木枯らしを、木枯らし一号と言います。
木枯らし一号は全国ニュースなどで発表され、冬の到来を感じさせる風物詩的なものとなっています。
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