十六夜とは?意味や由来と読み方は?
十六夜という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
十六夜とは十五夜(中秋の名月)の次の日の夜の月のことを言います。
十五夜で満月を堪能したのに、どうして次の日の月も見るの?と思うかも知れませんが、十五夜は満月とは限りません。
つまり、「今年も満月が綺麗だった」と十五夜を楽しんだものの、その翌日の十六夜が満月の年もあるのです。
ではなぜ、十五夜が満月ではなく十六夜が満月となる年があるのでしょうか。
そもそも十六夜とは一体どのような意味があるのでしょうか。
そこで今回は、十六夜の由来や十五夜との違いなどを調べてみました。
十六夜2024年はいつ?
2024年の十六夜は9月18日(水)となっています。
十六夜は、陰暦の8月16日の夜、またはその夜の月のこと、もしくは陰暦の16日の夜、またはその夜の月のことを指します。
ということは、2024年の十五夜(中秋の名月)は9月29日になります。
2024年以降の十六夜の日は?
2025年:10月7日
十六夜とは?
十六夜の意味
現在は太陽の運行によって暦を決める「太陽暦」が採用されていますが、昔は月の満ち欠けによって暦を決める「太陰暦」が使われていました。
月はおよそ15日の周期で新月から満月、そしてまた新月へと姿を変えるため、新月を月の始めの1日とし、新月から15日目の満月を経て、30日目の月を「晦日(みそか)月(※)」と呼んでいました。
このようなことから、十五夜が満月を表す言葉となっていきました。
現在では十五夜は中秋の名月である旧暦の8月15日(毎年9月半ばから10月上旬頃)のことを指す言葉となっていますが、そもそもは毎月15日のことを十五夜としていたのです。
ちなみになぜ旧暦の8月15日の十五夜だけが、今もなお風習として残っているのかと言うと、元々十五夜は中国から伝わった風習であり、旧暦の8月15日は秋に入り暑さが落ち着いている上に空気が澄んで月が綺麗に見える絶好の時期だったからと言われています。
そのため、他の月よりも特別なものとして、月を眺めて歌を詠んだり、酒盛りをする宴が行われるようになりました。
十六夜も新月から数えて16日目の月を指すもので、本来は毎月ある日だったのが、現在では中秋の名月の翌日のことを指すようになりました。
(※)今でも12月の最終日(31日)を大晦日と言いますが、これは新月から数えて30日目(平均は29.5日)が月の終わりを表すことから、その年の終わりという意味で「大」をつけ大晦日としたと言われています。
十六夜の由来
十六夜の名前の由来は、新月の日から数え上げて16日目の夜を指すことに基づいています。
この16日目の月は、満月の翌日にあたり、月の光が特に鮮やかで美しいとされています。
古代日本において、月は生活のリズムや農作業の目安として非常に重要な役割を果たしていました。
特に、月の満ち欠けは、季節の変わり目や収穫の時期など、多くの行事や祭りのタイミングを示す指標として利用されていました。
十六夜は、このような月のサイクルの中でも特別な位置を占めており、古くから人々に親しまれてきました。
実際、8世紀に編纂された『万葉集』にも、十六夜に関する詠み物や詩が多数収録されており、その歴史的背景や文化的価値を伺うことができます。
また、十六夜は、月がほぼ満ちている時期であり、月明かりを利用した夜間の作業や移動にも適していたため、古代の人々にとっては実用的な価値も持っていたと考えられます。
十六夜の読み方
基本的に「十六夜」は、「いざよい」と読みます。
この読み方は、古典文学や和歌などで頻繁に使用されており、日本の伝統的な文化に深く関わっています。
月にはそれぞれに呼び名があり、“十六夜の月”もその一つ。
十六夜の読み方は2つあって
- じゅうろくや
- いざよい
です。
普通に「じゅうろくや」と読む人もいますが、「いざよい」と読む方が一般的です。
十五夜はそのまま「じゅうごや」と読むのに、どうして十六夜は「じゅうろくや」の他に「いざよい」と呼ぶのか不思議ですよね。
これは、十六夜が十五夜よりも約50分ほど遅くなって現れることが関係しています。
昔の人にはそれが月が姿を現すのを躊躇していると映り、躊躇うという意味の「猶予(いざよ)い」という言葉を十六夜に当てたと言われています。
十六夜の他にも月の呼び方にはこのような素敵な意味から名づけられているものが多く、例えば十六夜の翌日の17日目の月は、十六夜よりもさらに月が姿を現すのが遅いため、その姿を「まだかまだか」と立って待つことから呼び名がつけられたと言われています。
また、十六夜は満月(十五夜)の翌日という意味から、別名では『既望(きぼう)』とも呼ばれています。
満月は望月とも表すので、既に望月を過ぎてしまったと言う意味でそのように呼ぶそうです。
宇部の空に昇った十六夜(いざよい)の月。十五夜の翌日のお月さまのことですが、「十六夜」と書いて「いざよい」と読ませるところが粋です(^^) pic.twitter.com/GV2opj8avd
— 片柳弘史 (@hiroshisj) September 22, 2021
「いざよい」と読む理由・由来は?
「いざよい」という言葉の読み方は、古代日本の言葉の響きや詩のリズムに深く根ざしています。
実際に、8世紀の『万葉集』や平安時代の『古今和歌集』など、古典文学の中には「いざよい」という表現が数多く見られます。
この「いざよい」という読み方は、和歌や詩の中での響きの美しさや、五七調のリズムを保つために用いられたとされています。
また、言葉の成り立ちを考えると、「いざよい」は「いざ」と「よい」の2つの言葉が組み合わさったものと考えられます。
「いざ」とは、古典文学において「今」という意味や、特定の時を指す接頭語として使われていました。
一方、「よい」は夜を意味する言葉として用いられていたことから、「いざよい」は「今の夜」という意味合いを持つとも言われています。
このように、「いざよい」という読み方は、古代日本の文化や言語の背景に基づいて成立したものであり、その由来や背景を知ることで、日本の言葉の豊かさや深さを感じることができます。
十六夜の月は満月?
暦の上では満月は十五夜となっているので、十六夜は満月から一日過ぎた日となり、満月ではありません。
十五夜=満月と思っている方が多いかも知れませんが、実は十五夜が必ず満月になるとは限りません。
月の満ち欠けは満月から次の満月まで29.5日となっており、新月から満月になるのは14.75日が平均となっています。
そのため、新月から15日後の十五夜が満月と考えられるようになったのですが、14.75日はあくまでも平均値です。
実際には、13.9~15.6日の間となっているので、十五夜よりも前に満月になったり、逆に後に満月になることもあります。
つまり、万が一十五夜にお月見ができなかったとしても、翌日の十六夜が真の満月となるので、焦らずに綺麗な月を堪能できるというわけです。
ちなみに「十六夜」と一口に言っても、実は2種類あることをご存知でしょうか?
- 中秋の名月の翌日の月
- 毎月の満月の翌日の月
一般的に「十六夜」と言うときに指すのが「中秋の名月の翌日の月」のことです。
そしてもうひとつ、毎月のように訪れる「満月の翌日の月」も十六夜と呼ぶんですね。
今日の月は「十六夜月(いざよいづき)」。
「いざよう」とはためらうという意味です。十五夜よりやや遅れて出てくるので、この名が付きました。https://t.co/qGvHLRABQS
満ち欠けに付けられた、美しい名前をご紹介します。 pic.twitter.com/Zw4lVfHlgb— 暦生活(こよみせいかつ) (@543life) November 20, 2021
月の満ち欠けの名前・呼び方・読み方
月の満ち欠けは、天体の動きと地球上の観測者の位置関係によって形成される現象であり、それぞれの段階には独特の名前や呼び方が存在します。
具体的には、新月、上弦の月、満月、下弦の月という4つの主要な段階がありますが、これらの間にも微妙な変化があり、それぞれに独自の名前がつけられています。
新月は、月が地球と太陽の間に位置する時期を指し、この時月の裏側が太陽に照らされるため、地球からは月が見えなくなります。
一方、満月は、地球の反対側に月が位置する時期を指し、月全体が太陽の光を受けるため、明るく輝きます。
上弦の月と下弦の月は、新月と満月の中間に位置する段階を指します。
上弦の月は、新月から約7日後に見られる半月の形状をしており、下弦の月は満月から約7日後に見られるもう一つの半月の形状を指します。
これらの月の名前や呼び方は、古くから日本の生活や文化に深く根ざしています。
特に、農業国であった日本では、月の満ち欠けは種まきや収穫のタイミングを知る重要な指標として利用されてきました。
また、和歌や俳句といった文学の中でも、月の美しさや移ろいやすさが多くの詩人や文人たちに詠まれてきました。
十六夜に関連する文化と意味
「月待ち講」というお月見の風習
「月待ち講」とは、日本の伝統的なお月見の風習の一つで、特に十六夜の夜に行われる月を愛でる集まりを指します。
この名前の由来は、文字通り「月を待つ」という意味からきており、古代からの日本人の月への敬愛の気持ちを表しています。
この風習は、平安時代に貴族や文人たちの間で始まったとされ、彼らは十六夜の夜に庭や高台に集まり、月の光を浴びながら和歌や詩を詠んだり、楽器の演奏を楽しんだりしました。
特に、月の光が水面に映る様子や、秋の夜風に舞う落ち葉を背景にした月の風景は、多くの文人たちを魅了し、多くの名作が生まれました。
また、この「月待ち講」は、時代とともに庶民の間にも広まり、地域や家族ごとに独自のお月見の行事や料理が生まれるなど、日本の文化や風習として深く根付いています。
現代でも、十六夜の夜には、家族や友人とともに庭やベランダで月を愛でる風習が多くの家庭で続いており、日本人の四季を愛でる心を感じることができます。
松尾芭蕉の俳句にも
松尾芭蕉は、17世紀の日本を代表する俳人として広く知られています。
彼の作品群の中には、四季の風物や日常の情景を繊細に捉えた俳句が数多くあります。
特に、「十六夜」に関する詠み物は、芭蕉の深い感受性や独特の世界観を垣間見ることができる作品として注目されています。
芭蕉は、月の美しさやその移り変わりを、独自の言葉で表現することに長けていました。
そのため、「十六夜」をテーマにした俳句は、彼の作品の中でも特に評価が高く、後の俳人たちにも多大な影響を与えています。
芭蕉の「十六夜」に関する俳句は、月の静寂や儚さ、そしてその美しさを感じることができる作品として、今も多くの人々に愛されています。
例)
十六夜の、月を見はやせ、残る菊
十六夜もまださらしなの郡(こおり)かな
十六夜はわづかに闇の初め哉
十六茶とは関係なし
「十六茶」という言葉もありますが、これは十六夜とは直接の関係はありません。
十六茶は、健康飲料として知られるもので、十六夜とは異なる意味や背景を持っています。
十六夜はいつの季語?
「十六夜」は、秋の季語として知られています。
俳句や和歌では、季節の移り変わりを感じさせる言葉として、十六夜が詠まれることが多いです。
十六夜の慣用句・熟語
「十六夜」に関連する慣用句や熟語は、日本の言語文化の中で深い歴史を持ち、多くの文献や詩にその足跡を残しています。
特に、「十六夜の月」という表現は、その独特な美しさや神秘性を象徴する言葉として、平安時代の古典文学や和歌に頻繁に登場します。
この表現は、十六夜特有の月の形や輝きを指し示すもので、多くの文人や詩人がその魅力に取り憑かれてきました。
さらに、「十六夜待ち」という熟語は、お月見のシーズンになると、人々が待ち望む十六夜の到来を表す言葉として用いられます。
この熟語は、十六夜の月の美しさやその時期の特別な意味を背景に持ち、日本人の心の中で深い共鳴を呼び起こすものとして、長い間親しまれてきました。
十六夜の前後の言葉
十六夜の前の日は「十五夜」と呼ばれ、これは満月の夜を指します。
一方で、十六夜の翌日は「名月」と呼ばれることもあります。
名月は、十五夜や十六夜の美しい月を指す言葉として使われることが多いです。
このように考えると、十五夜、十六夜、名月という3つの言葉は、月の美しさを称える日本の伝統的な言葉と言えるでしょう。
十六夜の例文
「十六夜の月は、満月の翌日に輝く美しい月である。」
「彼女は十六夜の月を見上げながら、深い思いを馳せていた。」
「十六夜待ちの夜、家族でお月見の準備をしている。」
十六夜の語源の由来
十六夜の語源や由来については、古くからの日本の伝統や文化と深く関わっています。
十六夜という言葉自体は、新月の翌日から数えて16日目の夜を指すことから来ています。
しかし、その背景には、月の満ち欠けや自然との関わり、さらには人々の生活や信仰といった要素が絡み合っています。
このように、十六夜という言葉は、日本の自然や文化、歴史と深く結びついているのです。
十六夜と十五夜との意味の違いは?
十六夜と十五夜の違いは、新月から数えて何番目の月かということです。
十六夜は新月から16日目の月なのに対し、十五夜は15日目の月。
十六夜の方が十五夜よりも1日遅く、十五夜は十六夜よりも1日早いというわけです。
昔から十五夜は「中秋の名月」として、貴族を中心に月を眺めながらの宴が行われていたのに対し、十六夜にはそのような風習はありませんが、年によっては天文学的には十六夜が満月となることもあります。
それに、実際に目で見てみると十五夜も十六夜も同じくらい満月に見えることから、今のように外灯や町の明かりが眩しくなかった時代には、十五夜に負けないくらい魅力的に映っていたのでしょう。
なお、和歌や短歌では秋の季語として十六夜が使われ、多くの貴族や俳人がその月の様子を詠んでいたとされています。
十六夜を英語でいうと?
また、新月なら「new moon」、三日月は「crescent moon」と言うのも、割と聞き馴染みがあるのではないかと思います。
それならば、十六夜は英語で何と言うのでしょうか。
残念ながら十六夜に当てはまる英語と言うのは存在しません。
そのため、十六夜を英語で表す場合には「the sixteenth night of a lunar month(太陰月で16番目の夜)」と言う表現になります。
ちなみに英語では十三夜、十四夜、二十三夜、二十六夜を表す言葉もありませんが、日本ではあまり知られてはいないものの、十五夜のように月を楽しむこれらの風習が数多く残っています。
つまりそれだけ日本人は、はるか昔から月とともに生きてきたということが伺えますよね。
なお、十三夜は「実は十五夜よりも月が綺麗」として知られるお月見のことを言います。
十三夜は旧暦の9月13日の月を指し、現在では10月半ばから11月上旬の月に当たります。
十五夜はまだ秋の入り口なのに対し、十三夜はどっぷりと秋に入っている時期なので、さらに空気が澄んでいて、しかも天気が安定しているのでお月見には絶好のタイミングと言われています。
昔は十五夜と並んで十三夜のお月見も大切に考えられており、十五夜だけお月見をすることを「片月見」と言って縁起が悪いとしていました。
十六夜の意味や由来のまとめ
私達が日頃、何気なく使っている「十五夜」や「十六夜」という言葉は、昔の人々にとって暦を知る上で欠かせない言葉だということがわかりました。
月の名称にはこの他にも、「上弦の月」「十日夜」「立待月」「寝待月」「下弦の月」「有明月」など、月の様子を記した呼び方がいくつもあります。
これらの意味をなぞらえながら、月を眺めてみるのもよいかも知れませんね。
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