長崎の精霊流しについて!爆竹の意味は?灯籠流しとの違いは?
九州に住んでいる方々にとっての送り火としてはなじみのある精霊流しですが、九州以外となると精霊流しではなく一気に灯籠流しが送り火という扱いになってしまいます。
今回はこの精霊流しとはいったいどのようなものなのか、長崎の精霊流しの詳細について詳しく調べて灯籠流しとの違いや初盆の精霊船も調べてまいります。
精霊流しの意味や由来
精霊流しはお盆という日本に馴染物ある行事の中で「送り火」に近い考え方をもった伝統行事です。
精霊流しは亡くなった方にとって初めてとなる「初盆」を迎えた遺族が亡くなった人がきちんと極楽浄土に行けるように精霊船を用意して流し場まで運んで流すという行事であり、「お盆の入日に帰ってきた祖先の霊を再びあの世に送り出すための行事」という意味がある「送り火」と似ている部分があります。
送り火は一般的な家庭でも基本的には8月16日に玄関先でろうそくなどに火をともす風習の一環なのですが、お盆は地域ごとにやり方や風習が大きく異なっていることもあり、8月ではなく7月に実行する地域もあるのです。
この精霊流しの由来は諸説ありますが一番信憑性が高いと思われているのが、中国にあった「彩舟流し(さいしゅうながし)」が日本に伝わって変化したという考え方です。
これは江戸時代に日本に来た中国人の貿易や通訳に携わっている方々が日本に来る途中に亡くなってしまい、その霊を弔うために行われえていた行事です。
その行事の中身はその年の亡くなった人々を供養するために小舟に乗せて海に流すというものですが、20年から30年に1回は実物大の大きな船を造って弔いをして最後は燃やすというものでした。
他にも小舟に提灯を置いて流すといった地域独自の行事が変化したとか、供物を菰(わらなどで編んだむしろのこと)包みで流していたものが変化して船に乗せて流したものがさらに変化したものという説などいろいろとあります。
由来については諸説ありますが、基本的には亡くなった人への弔いのためにお盆に行われる伝統行事の一つと考えておくといいでしょう。
このような考え方にのっとって行われているイベントはお盆の時期になると色々と行われていますので、気になる人は探してみるといいでしょう。
原爆の被害者に対する弔いのものもあれば、震災の被害者に対する弔いのものもあります。
精霊流しはいつ行われる?
精霊流しは送り火の考え方に通じるものがあるので、行われるのはお盆期間における最終日とされることも多い8月15日です。
山の送り火としても最大級である京都の五山送り火は16日ですが奈良高円山大文字など15日に行うところもあるので、このように「亡くなった方」や「祖先の霊を送る」という意味が込められた行事は8月の15日か16日に集中しているとお考え下さい。
なんでお盆の日はここまで統一されていないの?
東京などの大都市部や東北や北陸地方の農繁期と重ならないことを強く意識されていた地域では7月15日がお盆となっており、これらの送り火を実行する日も1ヶ月ずれます。
グレゴリオ暦を採用する前はお盆は7月15日で統一されていたのですが、グレゴリオ暦を採用したことで旧暦のまま7月15日に実行する地域とグレゴリオ暦に合わせて1ヶ月ほどずらした時期に実行する地域で割れてしまったようです。
今よりも農作業に従事することが多かった昔は農繁期に直撃することを嫌う人もかなりたくさんいたようで、このように割れてしまったようですが、もはやこれを統一することは不可能でしょう。
なので、引っ越しをしてお盆を迎えるという方はその地域のお盆の日程ややり方がどうなっているのかを確認したほうがいいです。
お盆はなじみのある伝統行事ではありますが、地域ごとに風習ややり方がかなり異なっているので引っ越し先に長い期間滞在するという方は調べておくべき項目となります。
長崎の精霊流しについて
精霊流しは「初盆を迎えた遺族が亡くなった人がきちんと極楽浄土に行けるように精霊船を用意して流し場まで運んで流す」という行事なのですが、どうやらこれも地域性が出ているようで場所によってやり方が異なっているようです。
長崎の精霊流しの場合は毎年8月15日に行われますが、そこで用意される精霊船は大小さまざまで主な材料は竹や板やワラと燃えやすいものとなっています。
また、船の突き出ている船首(みよし)と呼ばれる部分には家紋や家名や町名がわかりやすく記載されており、その船の飾りつけは故人の意向がふんだんに盛り込まれるようです。
そのため、飾りつけの違いが船によってかなり存在し、中にはこだわりぬいたものまで登場します。
そのようにして用意された船を引き連れる列の先頭には印灯籠と呼ばれる家紋を描いたものが立ち、その後に金属製の楽器である「鉦」を打ち鳴らしながら移動するようです。
この鉦の音に合わせて南無阿弥陀仏がなまったとされている「ドーイドーイ」という掛け声が唱えられるといわれております。
また、このタイミングで爆竹を盛大にならすのでこの様子だけを見ると故人を偲ぶものとは思えないという意見も出てきます。
精霊流しの爆竹の意味は?
先ほど軽く登場した爆竹ですが、これはただ単に持ち上げやくとして使っているのではなく、きちんとした意味があります。
精霊流しは中国が発祥であるという説を記載しましたが、この中国では爆竹は魔除けの効果があるとして一般的でありお墓参りで花火や爆竹を使う習慣があるようです。
この習慣を中国とかかわりが深かった長崎では受け入れており、死者への弔いである精霊流しでも使われるようになったと思われます。
日本ではお墓参りに花火や爆竹を使うという風習はそこまで浸透していないので、慣れていない人たちが見ると「死者への到来でここまで爆竹を使う意味が分からない」と思ってしまうのでしょう。
筆者も魔除けとして爆竹や花火を使うという風習は知らなかったので、かなり驚いています。
灯籠流しとの違い
灯籠流しと精霊流しの違いはやり方と意味でしょう。
灯籠流しはあくまでも迎え入れた祖先の方々を彼岸に送り出すための送り火という役割が非常に強いのですが、精霊流しは初盆を迎えた人だけを送り出すとなっているので送り火と同じような役割はあっても限定的なのです。
また、爆竹を使うとか舟を運んでいくという精霊流しのやり方はかなり独特で、灯籠流しではこのようなやり方は筆者がいろいろと調べてみた限り、見たことがありません。
また、環境破壊や後片付けの手間を考えて灯籠流しも精霊流しもやり方を変えているのは共通で、昔は精霊流しで船を流していたところも多いのですが今では流し場で解体されるのが基本とのことです。
灯籠流しも灯籠の後片付けが徹底されるようになり、きちんと回収できる手はずが整えることが基本となっています。
初盆の精霊船の意味は?
精霊船は盆前に死去した人の遺族が故人の霊を弔うために作られる特殊な舟です。
この「初盆」とは「亡くなった方の初めてのお盆」でありその人の霊を弔うための船が精霊船となっております。
つまり初盆の精霊船とは「亡くなった方の初めてのお盆に用意された弔いのための船」となります。
まとめ
以上、いかがだったでしょうか。
今回は精霊流しとはいったい何なのかを詳しく解説しました。
精霊流しは灯籠流しと同じように霊を弔うという意味がありますが、精霊流しは初盆を迎えた故人向けなのでその意味がちょっと異なっています。
しかもやり方が中国のものをいくつか取り入れているだけあって、かなり独特なものとなっているのもポイントでしょう。
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