半夏生とは?なぜタコや鯖やうどんを食べるのか?
雑節の一つである「半夏生」。
あまり聞き慣れない言葉ですが、稲作が中心だったかつての日本においては、とても重要で大切な日でした。
新暦によって日付が決められている現在では、季節感の異なる旧暦はより遠い存在に感じられることもありますが、二十四節気を始めとする昔ながらの節日や暦日は、当時に生きる人々の生活や思いまでも感じさせてくれます。
では、半夏生とは一体どのような日なのでしょうか。
と言うわけで今回は、半夏生について調べてみることにしました。
半夏生とは?
半夏生は雑節の一つで「はんげしょう」と読みます。
半夏生は夏至から数えて11日目のことを指し「雑節」の7番目に当たり、この時期に咲く花から命名されました。
半夏生は農業に携わる人においてとても重要な日と位置付けられ、昔はこの日までに田植えを終わらせ、以後は絶対に田植えを行わない風習がありました。
その理由は半夏生になると半夏(はんげ)と呼ばれる毒草が生えたり、空から毒が降ってくると考えられていたからです。
半夏生の時期は梅雨の後半に差し掛かるため、多湿な環境がカビや細菌を生みやすいことから、このような注意喚起がなされていたと言われています。
半夏生の由来
なお、半夏生の由来は薬草の半夏(正式名称は烏柄勺=カラスビシャク)からきており、漢方薬に配合される生薬の半夏の原料となっています。
半夏生までに田植えを終えた農家の人は、半夏生の日の天候でその年の作物の出来を占っていたそうです。
(※)半夏生という別の植物もありますが、こちらは半夏の時期に花が咲くためこの名前が付けられた説や、葉の一部分が白く変色するため、半化粧が転じて半夏生と呼ばれるようになった説などがあります。
どちらにしても、今回の半夏生の由来となった半夏(烏柄勺)とは別の種類となります。
参考までに半夏生の画像を添付しておきます。
また、半夏生とは、二十四節気の他に季節をより詳しく捉えるために設けられた特別な暦日のことを言います。
これを雑節と言うのですが、節分や彼岸、八十八夜、土用なども雑節に含まれています。
2024年の半夏生はいつ?
2024年の半夏生は7月1日(月)となっています。
半夏生の日付は、以前までは夏至から数えて11日目とされていましたが、現在は太陽が黄経100度を通過する日となっています。
なお、半夏生の日は毎年異なり、いつも同じ日ではありません。
とは言え、一週間や一ヵ月変わるということはなく、例年は7月1日から2日となっています。
7月に入ったら半夏生と覚えておくとよいでしょう。
また、半夏生はその日一日を指すだけではなく、半夏生から5日間の期間を指すこともあります。
2024年であれば7月2日のみを指す場合もあれば、7月2日から7日までの5日間と答えることもできるというわけです。
半夏生の風習や行事は?
物忌みとは習慣となっていることを止めたり、厄を避けることを言いますが、半夏生の場合は5日間の期間中、農家の方は農作業の一切を止めていました。
特に農家の方々にとっては半夏生は大変重要な日と言われ、「チュウ(夏至)は外せ、ハンゲ(半夏生)は待つな」という言葉があるくらいです。
これは、夏至後、半夏生になるまでに田植えを終わらせるとよい、という意味で、半夏生の後はいくら天候がよくても田植えはしないという習慣がありました。
また、半夏生前に田植えを終わらせた農家は、当日の天候で稲が豊作か凶作かを占っていたそうです。
しかし現在は、農業改革や品種改良が進み、田植えの時期はずっと早くなっています。
このため、半夏生を目安として田植えを行う農家はいないというのが現状のようです。
これは、田植えを終えるまで毎日重労働が続くことから、半夏生の間は体をしっかり休ませる意味合いがあったと言われています。
三重県の志摩では、半夏生にはハンゲと呼ばれる妖怪が徘徊するため、家の中でじっと大人しくしておくという言い伝えがあります。
これもやはり、農家の人がしっかり休みをとるためだったと言われています。
また、井戸に蓋をして空から降ってくる毒が入らないようにしたり、この日に収穫した野菜や野草は食べない、竹の花を見ると死んでしまうため竹林には入っていけない、ねぎ畑に入ってはいけないなど各地において色々な風習がありました。
半夏生に食べる食べ物
半夏生には、上記のような風習以外に、地域によって昔から食べられている食べ物があります。
そこでここでは、半夏生に食べる食べ物をご紹介します。
タコ
関西地方では、半夏生にタコを食べる風習があります。
これは、タコの足が四方八方に伸びる様子に「稲の根が張ってしっかりと伸びる」と願懸けをしているそうです。
またタコに吸盤があるので、こちらも「地にしっかりと根が張って実りが多くなるように」との願いが込められています。
半夏生になると関西各地のスーパーではタコが並び、ちょうど旬を迎える瀬戸内産のマダコが店頭に数多く並びます。
タコに含まれるタウリンには疲労回復の効果があると言われているため、農作業で疲れた体を回復させるのにもタコが役立っていたと考えられます。
鯖
福井県では半夏生に焼き鯖を食べる風習があります。
江戸時代に福井藩の藩主が、田植えを終えた農民を労って栄養価の高い鯖を食べさせたのが始まりで、それを知った魚屋が半夏生に串に刺さった焼き鯖を販売するようになったと言われています。
半夏生に食べる焼き鯖は「半夏生鯖」と呼ばれています。
うどん
うどん県として全国的に有名な香川県では、毎年7月2日を「うどんの日」としてうどんが無料で振舞われます。
香川県では、農作業が一段落するとその年に収穫された小麦を使ってうどんを打ち、作業に関わった人に振舞う風習が昔からあり、それが今も残っています。
作業を手伝ってくれたことを労うのと同時に、「来年も豊作でありますように」という願いも込められているそうです。
半夏生と雑節との関係
半夏生は雑節の一つですが、そもそも雑節とは何なのでしょうか。
雑節は暦日の一種なのですが、暦日には五節句や二十四節気、七十二候などがあります。
これらは旧暦が使われていた時代に、中国が発祥となったもので、簡単に言うと季節を表す名称になります。
季節は春夏秋冬の四季で表されることが多いですが、それでは一年を大まかに4等分しただけなので、季節の移ろいを細かく知ることができません。
そこで作られたのが二十四節気、そして七十二候です。
二十四節気は一年を24等分、七十二候は一年を72等分(二十四節気の24等分をさらに5日ごとに3つに分けたもの)となっており、より季節の詳細を知ることができます。
しかし、二十四節気も七十二候も中国で作られたため、日本の気候や風土にはそぐわない面もあり、それを解消するために日本独自で作られた暦日が雑節となります。
雑節には半夏生の他に、節分、彼岸、社日、八十八夜、入梅、土用、二百十日、二百二十日の合計9つがあります。
半夏生は雑節の中で唯一、七十二候の「半夏生ず」から名称が付けられており、夏の時候を表す季語としても用いられます。
なお、半夏生の時期は梅雨が後半戦に入り、大雨に警戒することが増えます。
西日本ではこの時期に降る大雨「半夏雨(はんげあめ)」と呼んだり、洪水になると「半夏水(はんげみず)」と言ったりします。
半夏生のまとめ
いかがでしたか?
半夏生は昔の方にとって重要な日であり、農家では田植えを終わらせる目安とされていました。
半夏生の期間中は農作業を一切休み、疲れをとっていたと言われています。
また、半夏生では各地にて独自の食べ物を食べる風習が今も残っており、関西地方ではタコ、福井県では鯖、香川県はうどんがとても有名です。
半夏生は梅雨の時期の後半にあたるため、雨量が多く洪水などの災害が起きやすいことから、天気予報に十分注意をする必要があります。
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